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金融行政を「事業成長担保権」から推察~アフターコロナの経営戦略とM&Aを考える④~【M&Aの知識】

投稿日:2022年1月4日 最終更新日:

中小企業の経営を一緒に考えていく上で、マクロ経済、市場やライバルの動向など
外部環境を意識していくことが重要なポイントであることは、言うまでもありません。

その中でも、大企業や上場企業より、資金調達の手段が金融機関に依存しがちな中小企業にとって、
金融行政をチェックしていくことは、今後の企業買収や設備投資などに必要な資金調達を
検討していく上で重要な項目になります。

先のコラムで触れてきた「中小企業版私的整理ガイドライン」も
2021年11月5日、全国銀行協会の「中小企業の事業再生等に関する研究会」で
新しい私的整理ガイドラインの議論がスタートし、2022年4月以降の本格運用開始に向けて
動きだしています。

今回は中小企業にとって重要なトピックスである、「事業成長担保」について
触れてみたいと思います。

事業成長担保とは

金融庁の「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会」が公表した
2020年12月25日の論点整理の中に、仮称ながら、下記のような記載があります。

事業成長担保権とは、法人の債務(将来発生する債務を含む。)を担保するために設定する担保権であって、その目的物は、動産、債権のほか、契約上の地位、知的財産権、のれん等(将来発生するものも含む。)を含められるものとする

つまり、事業全体に関する、不動産や預貯金以外の帳簿上の資産だけでなく、
帳簿にのらない知的財産権など、収益を生み出すものすべてを担保とする、ということになります。
なぜこのような考え方が出てきたのかは、大きく2つの背景が考えられます。

① 金融機関の経営環境の悪化
近年の低金利や、実質的に無借金企業の増加など、収益性と市場環境が厳しくなっている
金融機関にとって、リスクが高い企業や事業へ融資にチャレンジをしないと、
一定以上の金利を設定するのは難しいということになります。

そのチャレンジをしていく時に、全体の事業を評価して「担保」とする枠組みが法的に担保されると、
融資がしやすくなります。

② ベンチャー企業や事業再生への資金調達の必要性
貸出の平均金利が1%を切っている日本の金融機関に比べ、欧米は3%程度の金利を確保しています。
その背景は、欧米に比べ、日本の金融機関はリスクマネーの供給に慎重な姿勢から来ています。
リスクマネーとは、スタートしたての、収益の実績が乏しいベンチャー企業や
法的スキームや私的整理ガイドラインなどを活用した事業再生へのDIPファイナンスになります。

日本経済が成長していくためには、新たな事業や将来成長する事業の再生の件数を
さらに増やしていく資金調達手段が必要になります。

 

「事業成長担保」のM&Aの活用

大手企業が買収企業の信用力やキャッシャフローを担保にして資金調達する、
「LBO」という資金調達手段がありますが、その中小企業版として、
「事業成長担保」を活用することができます。
中小企業が企業買収することにより、自社の既存事業の資金調達に影響を及ぼすことは
極力避けたいところです。

「事業成長担保」を活用することで、買収する企業を担保にするということが可能となります。
本業外借入ということで金利などは若干高くなる可能性はありますが、
資金調達力という経営課題解決において、有効な手段であると言えます。

中小企業の経営を一緒に考えていく上で、マクロ経済、市場やライバルの動向など、外部環境を意識していくことが重要なポイントであることは、言うまでもありません。

その中でも、大企業や上場企業より、資金調達の手段が金融機関に依存しがちな中小企業にとって、金融行政をチェックしていくことは、今後の企業買収や設備投資などに必要な資金調達を検討していく上で、重要な項目になります。

先のコラムで触れてきた「中小企業版私的整理ガイドライン」も、2021年11月5日、全国銀行協会の「中小企業の事業再生等に関する研究会」で、新しい私的整理ガイドラインの議論がスタートし、2022年4月以降の本格運用開始に向けて動きだしています。

今回は中小企業にとって重要なトピックスである、「事業成長担保」について触れてみたいと思います。

事業成長担保とは

金融庁の「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会」が公表した、2020年12月25日の論点整理の中に、仮称ながら、下記のような記載があります。

事業成長担保権とは、法人の債務(将来発生する債務を含む。)を担保するために設定する担保権であって、その目的物は、動産、債権のほか、契約上の地位、知的財産権、のれん等(将来発生するものも含む。)を含められるものとする

つまり、事業全体に関する、不動産や預貯金以外の帳簿上の資産だけでなく、帳簿にのらない知的財産権など、収益を生み出すものすべてを担保とする、ということになります。
なぜこのような考え方が出てきたのかは、大きく2つの背景が考えられます。

① 金融機関の経営環境の悪化
近年の低金利や、実質的に無借金企業の増加など、収益性と市場環境が厳しくなっている金融機関にとって、リスクが高い企業や事業へ融資にチャレンジをしないと、一定以上の金利を設定するのは難しいということになります。

そのチャレンジをしていく時に、全体の事業を評価して「担保」とする枠組みが法的に担保されると、融資がしやすくなります。

② ベンチャー企業や事業再生への資金調達の必要性
貸出の平均金利が1%を切っている日本の金融機関に比べ、欧米は3%程度の金利を確保しています。
その背景は、欧米に比べ、日本の金融機関はリスクマネーの供給に慎重な姿勢から来ています。
リスクマネーとは、スタートしたての、収益の実績が乏しいベンチャー企業や、法的スキームや私的整理ガイドラインなどを活用した事業再生へのDIPファイナンスになります。

日本経済が成長していくためには、新たな事業や将来成長する事業の再生の件数をさらに増やしていく資金調達手段が必要になります。

 

「事業成長担保」のM&Aの活用

大手企業が買収企業の信用力やキャッシャフローを担保にして資金調達する、「LBO」という資金調達手段がありますが、その中小企業版として、「事業成長担保」を活用することができます。
中小企業が企業買収することにより、自社の既存事業の資金調達に影響を及ぼすことは極力避けたいところです。

「事業成長担保」を活用することで、買収する企業を担保にするということが可能となります。
本業外借入ということで金利などは若干高くなる可能性はありますが、資金調達力という経営課題解決において、有効な手段であると言えます。

この記事の執筆者

澤田 兼一郎(代表取締役社長/中小企業診断士)

立命館大学経済学部経済学科卒後、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。

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