つまり、事業全体に関する、不動産や預貯金以外の帳簿上の資産だけでなく、帳簿にのらない知的財産権など、収益を生み出すものすべてを担保とする、ということになります。
なぜこのような考え方が出てきたのかは、大きく2つの背景が考えられます。
① 金融機関の経営環境の悪化
近年の低金利や、実質的に無借金企業の増加など、収益性と市場環境が厳しくなっている金融機関にとって、リスクが高い企業や事業へ融資にチャレンジをしないと、一定以上の金利を設定するのは難しいということになります。
そのチャレンジをしていく時に、全体の事業を評価して「担保」とする枠組みが法的に担保されると、融資がしやすくなります。
② ベンチャー企業や事業再生への資金調達の必要性
貸出の平均金利が1%を切っている日本の金融機関に比べ、欧米は3%程度の金利を確保しています。
その背景は、欧米に比べ、日本の金融機関はリスクマネーの供給に慎重な姿勢から来ています。
リスクマネーとは、スタートしたての、収益の実績が乏しいベンチャー企業や、法的スキームや私的整理ガイドラインなどを活用した事業再生へのDIPファイナンスになります。
日本経済が成長していくためには、新たな事業や将来成長する事業の再生の件数をさらに増やしていく資金調達手段が必要になります。
「事業成長担保」のM&Aの活用
大手企業が買収企業の信用力やキャッシャフローを担保にして資金調達する、「LBO」という資金調達手段がありますが、その中小企業版として、「事業成長担保」を活用することができます。
中小企業が企業買収することにより、自社の既存事業の資金調達に影響を及ぼすことは極力避けたいところです。
「事業成長担保」を活用することで、買収する企業を担保にするということが可能となります。
本業外借入ということで金利などは若干高くなる可能性はありますが、資金調達力という経営課題解決において、有効な手段であると言えます。