もう少し細かく説明します。
(1)2017年に策定された「事業引継ぎガイドライン」を全面改定したもの
前回の「事業引継ぎガイドライン」も約50ページとなかなかにボリュームがありましたが、今回の「中小M&Aガイドライン」は約90ページと更にボリュームが増えています。
タイトルにM&Aという文言が入り、「中小零細企業の大半が後継者不在は周知の事実、M&Aで第三者への事業引継ぎを!」と言う国の考えが反映されている気がします。
「事業引継ぎガイドライン」もこれから事業承継を考える経営者にとって非常に分かりやすく説明しているので、改定というより「事業引継ぎガイドライン」と「中小M&Aガイドライン」を状況に合わせて、使い分ければ良いと思います。
実際、ご子息はいるがまだ若くて承継するかどうか判断しかねている経営者様の相談を受けた際に2冊を印刷してお渡ししたのですが大変喜ばれました。
(2) 後継者不在の中小企業に向けたM&Aの基礎知識や手数料の目安を提示
これまで国がM&Aの基礎知識や手数料の目安、専門家の比較などをきちんとした形で提示した資料はなかったのではないでしょうか。そういう意味で画期的だと思います。
会社売却の相談を受ける際、皆様初めての経験なので、ガイドラインに書かれているような内容を一通り説明させていただくのですが、国(経済産業省)が出した資料はお客様の信頼度が違うのでありがたいですね。
会社売却を検討されているオーナー経営者にとっては、最初で最後の大仕事となる可能性も高いので、少しボリュームはありますが、一読されることをおすすめします。
(3)M&A業者(専門会社、金融機関、士業など)に向けた行動指針を提示
この提示も画期的ですね。自己責任で好きにすれば良いとも思いますが、国が行動指針を示さなければならないほど、不良なM&A業者が増えているということでしょうか。
策定委員を務められた複数名から話を聞く機会があったのですが、「不良M&A業者でトラブルが増えていることを受けての国の対策」とはっきり仰っていました。
大手M&A会社、地元小規模M&A会社、それぞれに良し悪しがあると思いますが、今のところ担当者の良し悪しが大きく影響することは間違いありません。担当者が良いM&Aアドバイザーかそうでないかを判断する基準になるという点でも一読の価値があります。
まとめ
M&Aの基本、専門家、手数料などが分かりやすくまとめられている1冊です。
売り買いともにM&Aを検討される場合には、是非一度目を通されることをおすすめします。
また、ガイドライン中に「セカンドオピニオン」という言葉が何度も出てきましたが、不良M&A業者にだまされないように「セカンドオピニオン」を上手く利用して、後悔しないM&A取引を行いたいものです。