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コロナ禍を経たM&A取引で気を付けること~売り手(譲渡企業)編~【最近の話題/三村のコラム】

投稿日:2021年4月12日(月曜日)

前回のコラムでは、買い手(譲受企業)がコロナ禍を経たM&A取引で気を付けることを書きましたが、今回は売り手(譲渡企業)の目線で気を付けることを書きたいと思います。
前回のコラムには、コロナ禍を経たM&A業界の現状についても書いていますので、合わせてご覧いただければ幸いです。

 

コロナ禍を経たM&A相談の変化

コロナ禍を経て、M&Aの相談を売り手と買い手から受けていて特に感じる大きな変化は、以下の2つです。

(1) 業績の悪い売り手の相談が増えた。
(2) 買い手の評価が厳しくなった。

コロナ禍の悪影響を受け、業績が悪化したことで売却を考えた売り手が多いように感じます。
また、買い手自身もコロナの悪影響を受けている企業は多く、買収資金を金融機関からの借入に頼っていた買い手は買収検討自体を中止していたり、金融機関に頼らず手元資金が潤沢な買い手も買収予算を絞っていたり、譲受案件の内容をより細かくかつ厳しく評価しているようです。
「コロナ禍を経て、売り手も買い手も厳しくなった」と言うのが率直な感想です。

column29
アフターコロナ(ウィズコロナ!?)のM&A取引で売り手(譲受企業)が気を付けること

コロナ禍を経て売り手も買い手も厳しくなった中、私が売り手であれば、以下の2点に特に気を付けてM&Aを進めます。

(1) 売却する時期
(2) 買い手(譲渡企業)の選定

売り手の業績が悪化して売却事業の評価が低くなっている、また、買い手は先行きが不透明で買収事業の評価を低く見積もらざるを得ない状況、すなわち、売り手は安くしか売れない、買い手は安くしか買えない状況で、急いでM&A取引を進めることが得策なのか、冷静になって考える必要があると思います。

赤字が続いて業績回復が見込めないケースや経営者の体調不良など、急ぐ理由がある場合には、売却対象事業をなるべく高く評価してくれる買い手の選定が重要になります。

事例1
例えば、昨年弊社が鉄工所の売却をお手伝いした案件では、売り手と買い手が異業種でしたが、従来外注していた溶接作業や金属加工作業を内製化したいという買い手のニーズに加えて、売り手と買い手の物理的な距離が近かったことから、非常に好条件でM&A取引が成立しました。
やはり、買い手の意欲の高い案件は取引金額も高くなります。
 
事例2
また、昨年に売却の相談を受けたものの、取りあえず準備のみを行い、実際に買い手候補への提案を先延ばしにすることを提案した案件もあります。
売り手は、コロナの影響で前回決算は赤字であったものの、相談を受けた際には業績が回復しており、次回決算では黒字回復が確実視されている状況でした。
売り手のオーナー経営者は、年齢60歳代前半で健康状態も良好ですが、コロナ禍のような不測の事態を受け、自身が設定した引退年齢65歳を前倒しして、事業売却を考えているとのことでした。
私からは、直近決算が赤字だと買い手の最初の印象が悪くなること、現時点では買い手も不安で好評価を得られにくいことなどをお話しして、資料収集や買い手候補先選定の準備は開始するが、次回決算以降に具体的な交渉を行うことを提案しました。
現在、少数株主の整理や、買い手候補先に提示する資料作成の準備を行っています。
やはり、しっかりと準備した方が、買い手候補先に対して良い提案・売り手にとって有利な提案ができますし、相性の良い買い手候補先と巡り合える可能性も高いと思います。

 

コロナ禍で、売り手も買い手も不安になっている現状ですが、自社の状況や業界の環境を見極めて、より良いタイミングでより良い買い手を見つけられると良いですね。

弊社では、ビフォーM&Aとして、自社の評価を高くするにはどうすれば良いのか、どんな買い手が自社を高く評価してくれるのか、株主の集約や社内ルールの整備など売却前の準備等、さまざまな相談に対応していますので、お気軽にお声掛けいただければ幸いです。

この記事の執筆者

三村 尚(情報開発部長 M&Aシニアエキスパート)

横浜国立大学卒。金融機関(法人営業)、調査会社(調査、営業)を経て、2012年から現職。多種多様な業種において、延べ2,000社の企業評価を実施。中小零細企業の後継者不在案件を中心に50件超のM&Aを支援。

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